男たちのひそかな抵抗

2011.10.14

のっけからあまりきれいな話ではないが、住まいの中でどこが一番落ち着くかと聞かれれば、私の場合は、それはトイレ(便所)。トイレに入りながら新聞を読むことが、一番ホッとする行為なのだ。ただ、家内からは、新聞を後から読む人の身にもなって!と、トイレへの持ち込みは固く禁じられている。しようがないので、新聞の代わりに本などを抱えて入るが、やはり、トイレには新聞がよく似合う。一方、私はさすがにやらないが、同僚であった美術史の先生は、低血圧気味ということもあってお風呂で本を読むという。聞くところによれば、最近はお風呂で読書することが流行で、水に平気な本や本を読むための特別なアイテムも販売されていると聞く。ところで、どうしてトイレとお風呂は、心がやすまるのか。そこに共通するのは、小さな空間であること、一人になれる空間であること、どちらも肌をあらわにしている空間であること、である。やはり、人間、狭さに胎内の記憶がよみがえるのかもしれないし、また、衣服を脱ぐ行為を通して心身の自由を取り戻しているのかもしれない。裸になってやっと、自然の自分を取り戻せる。しかも、誰にも見られることがないだけ、自由な場なのだろう。また、これが広々とした空間であれば、少し不安となるが、狭苦しさから得る安心感というものもあるのかもしれないのだ。トイレを書斎代わりに使うのは私の貧乏性のせいかと思いきや、同様な感想をお持ちの男性と時折出会う。書斎を取り上げられた男たちのひそかな抵抗なのかもしれない。

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